
介護休暇は有給?無給?労務トラブルを防ぐ給与ルールの決め方
この記事の要点
- 介護休暇中の給与は法律上、有給・無給のどちらに設定しても違法ではない。
- 無給とする場合は、就業規則への明記と年次有給休暇の代替提示がトラブル防止に有効。
- 有給とする場合は、最初の数日のみ有給にするなど段階的な制度設計も可能。
介護休暇を取得した期間の給与について、法律上は有給とする義務はなく、有給か無給かは企業が就業規則等で自由に決めることができます。そのため、会社が「無給」と定めている場合は、介護休暇中の給与は支払われません。
仕事と介護の両立を支援する制度として重要性が高まるなか、介護休暇の有給・無給の取り扱いや手続きのルールを明確にしておかないと、従業員との間で労務トラブルに発展するケースがあります。本記事では、介護休暇の基本ルールや、有給・無給を決定する際の実務上の注意点について詳しく解説します。人事労務の適切な制度設計にお役立てください。
介護休暇とは?制度の基本と取得条件
介護休暇は、要介護状態にある家族の介護や世話を行う従業員が、1日または時間単位で休暇を取得できる法律上の制度です。まずは制度の対象者や取得可能日数などの基本事項を整理します。
介護休暇の対象者と取得可能日数
介護休暇を取得できるのは、負傷、疾病、または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態(要介護状態)の家族を介護する従業員です。対象となる家族の範囲は以下の通りです。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母、子、配偶者の父母
- 祖父母、兄弟姉妹、孫
取得できる日数は、対象家族が1人の場合は1年度において「5日まで」、2人以上の場合は「10日まで」と定められています。1日単位での取得だけでなく、時間単位での取得も可能です。ただし、業務の性質上、時間単位での取得が困難と認められる労使協定がある場合は、日単位での取得に限定することができます。
介護休業との違い
介護休暇と混同しやすい制度に「介護休業」があります。これらは取得目的や期間、給付金の有無などが大きく異なります。
- 介護休暇:突発的な通院の付き添いや介護サービスの各種手続きなど、単発・短期的な用事のために取得するものです。当日の口頭申し出による取得も認められます。
- 介護休業:従業員自らが直接介護をするのではなく、仕事と介護を両立するための体制(ケアマネジャーとの調整や介護施設の選定など)を整えるために取得する中長期の休業です。対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割取得できます。
詳細な制度要件や最新の法改正情報については、厚生労働省の公式情報をあわせてご確認ください。
介護休暇は「有給」か「無給」か?法律上の判断基準
冒頭で述べた通り、育児介護休業法において介護休暇中の給与を有給とするか無給とするかは、各企業の裁量に委ねられています。法律上、企業に課せられているのは「休暇(休み)を与えること」であり、その期間中の「給与を支払うこと」までは義務付けられていません。
ノーワーク・ノーペイの原則
労働法における基本的な考え方に「ノーワーク・ノーペイの原則」があります。これは、労働者が労働を提供しなかった時間については、原則として賃金(給与)を支払う必要がないという原則です。介護休暇についても、特段の労使合意や就業規則の定めがない限り、無給として処理することに違法性はありません。
介護休業給付金との関係
中長期の休業を対象とする「介護休業」の場合、一定の要件を満たせば雇用保険から「介護休業給付金」として休業開始前賃金の67%程度(上限・下限あり)が支給されます。しかし、短期の「介護休暇」については、雇用保険からの給付金制度はありません。そのため、企業が無給と定めている場合、従業員は介護休暇を取得した時間分の収入を完全に失うことになります。
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集客の記事づくりを任せる →介護休暇を「無給」にする場合の失敗例と対策
介護休暇を無給に設定すること自体は合法ですが、事前の周知やルール設計が不十分な場合、現場で思わぬトラブルが発生することがあります。以下に、一般的な失敗例とその対策を紹介します。
失敗例:就業規則の記載漏れによる混乱
就業規則(または育児介護休業規程)に介護休暇の給与の取り扱い(有給か無給か)を明記していなかったケースです。従業員が「法律で定められた休暇だから当然有給だろう」と思い込んで介護休暇を取得したところ、給与明細を見て初めて欠勤控除(無給処理)されていることに気づき、不信感を抱いて労使間トラブルに発展してしまいました。
対策:就業規則への明記と事前説明の徹底
このようなトラブルを防ぐためには、就業規則に「介護休暇中の期間は無給とする」旨を明確に記載しておく必要があります。さらに、従業員から介護休暇の取得申し出があった際には、以下の手順で確認・説明を行うことが推奨されます。
1. 取得理由と対象家族の確認:介護休暇の対象要件を満たしているか確認します。
2. 給与の取り扱いの説明:自社の就業規則に基づき、介護休暇中は無給となる旨を口頭および書面で説明します。
3. 代替案(年次有給休暇)の提示:無給であることを理由に取得をためらう従業員に対しては、年次有給休暇(有給)を代わりに消化して休むことも可能である選択肢を提示します。
介護休暇を「有給」にするメリットと制度設計
一方で、福利厚生の充実や優秀な人材の離職防止(介護離職の防止)を目的に、介護休暇を「有給」として運用する企業も存在します。特に、介護と仕事の両立に直面しやすい40代から50代のベテラン従業員にとって、介護休暇が有給であることは大きな安心感につながります。
有給にする場合の設計パターン
介護休暇を有給にする場合、すべての時間を100%有給にする方法のほか、以下のような柔軟な設計を行うケースがあります。
- 一部有給化:5日間のうち、最初の2日間のみを有給とし、3日目以降は無給とする設計。これにより、突発的な初動対応時の経済的負担を軽減しつつ、企業の費用負担を一定程度に抑えることができます。
- 一部支給:基本給の50%程度を支給するなど、一定割合の支払いを保証する設計。
助成金の活用
仕事と介護の両立支援に取り組む中小企業に対しては、国から助成金(両立支援等助成金など)が支給される制度が用意されている場合があります。要件を満たすことで、制度導入にかかる負担を軽減できる可能性があります。詳細な申請要件や手続きについては、中小企業庁などの情報をご確認ください。
介護休暇の給与計算と実務上の注意点
介護休暇を無給とする場合、給与計算の実務において正確な控除計算を行う必要があります。特に、時間単位で取得された場合の計算ミスに注意が必要です。
欠勤控除の計算式
時間単位の介護休暇を無給処理する場合、一般的には以下の計算式を用いて控除額を算出します。
$$\text{控除額} = \frac{\text{月給(基本給など基準となる賃金)}}{\text{1ヶ月平均所定労働時間}} \times \text{介護休暇の取得時間数}$$
※1ヶ月平均所定労働時間の算出方法や、控除対象となる手当の範囲は、各社の就業規則の賃金規程に準拠します。算出方法に不備があると、労働基準法に抵触する恐れがあるため、事前に就業規則との整合性を確認してください。
社会保険料と住民税の取り扱い
介護休暇が無給であっても、従業員の社会保険(健康保険・厚生年金)や住民税の免除制度はありません。介護休業とは異なり、短期間の休暇であるため、通常通り社会保険料や住民税が発生します。無給によって当月の給与支給額が社会保険料等の自己負担額を下回る場合は、従業員から個別に徴収するなどの実務対応が必要になる点に留意してください。なお、個々の状況による具体的な税務や労務管理の最終判断については、社会保険労務士などの専門家へ相談することをお勧めします。また、個人の体調や介護に関する不安がある場合は、適切な医療機関や地域包括支援センター等の専門機関にご相談ください。
まとめ:自社に最適な介護休暇ルールの策定を
介護休暇中の給与を有給とするか無給とするかは、企業の経営方針や人材戦略によって判断が分かれます。無給とする場合は、従業員との認識のズレを防ぐために就業規則への明記と事前説明が不可欠です。有給とする場合は、離職防止効果や採用活動におけるアピールポイントとなる一方で、コスト面のシミュレーションが求められます。
自社の従業員の年齢構成や就業状況を考慮し、労使双方が納得できる適切なルール設計を行いましょう。
よくある質問
- Q. 介護休暇中の給与を無給にすることは違法ですか?
- A. 違法ではありません。育児介護休業法において、介護休暇中の給与を有給にする義務は課せられていないため、企業の就業規則で「無給」と定めることができます。
- Q. 介護休暇を取得した日に、代わりに有給休暇を充てることは可能ですか?
- A. 可能です。介護休暇が無給である場合、従業員が希望すれば、有給扱いとなる「年次有給休暇」を代わりに取得して休むことができます。
- Q. 時間単位で介護休暇を取得された場合、給与はどのように計算しますか?
- A. 無給とする場合、就業規則の賃金規程に基づき、1時間あたりの賃金単価を算出した上で、取得した時間分を月給から控除(欠勤控除)します。



