介護事業のハラスメント対策【2026】相談窓口と手順
この記事の要点
- 職員間と利用者側、ハラスメントの種類で対応窓口を分ける
- 相談記録は発言内容・日時・目撃者の有無まで即日メモに残す
- 小規模事業所は外部の相談窓口や社会保険労務士の併用が現実的
介護事業のハラスメント、まず何をすべきか
介護事業のハラスメント対策は、職員間のハラスメントと利用者・家族からのハラスメント(カスタマーハラスメント)を分けて仕組みを作ることが出発点です。前者は労働施策総合推進法に基づくパワハラ防止措置の対象であり、後者は事業所独自のルール整備と記録が中心になります。
介護現場で起きやすいハラスメントの種類
介護現場で問題になりやすいハラスメントには、大きく分けて3つのパターンがあります。1つ目は上司や先輩職員から新人・パート職員への暴言や過度な叱責といった職員間パワーハラスメント、2つ目は利用者やその家族から職員への暴言・暴力・性的言動といった利用者等によるハラスメント、3つ目は職員同士のセクシュアルハラスメントです。
厚生労働省は介護現場におけるハラスメント対策について手引きや研修資料を公表しており、事業所が就業規則や対応マニュアルを整備する際の参考情報として広く使われています。
なぜ介護業界でハラスメントが問題になりやすいのか
介護サービスは身体介護を伴い、職員が利用者の自宅や個室に一人で訪問・対応する場面が多いことが背景にあります。密室性が高く第三者の目が届きにくいため、暴言や身体的な接触を伴う行為が発生しても表面化しにくい構造があります。また「利用者は弱い立場だから強く出られない」という意識が職員側に働き、我慢してしまうケースも見られます。
職員間ハラスメントへの対応手順
相談窓口の設置から始める
労働施策総合推進法により、事業主にはパワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が義務付けられています。具体的には以下の対応が求められます。
- 方針の明確化と周知・啓発(就業規則への明記、研修の実施)
- 相談窓口の設置と周知
- 相談があった際の事実関係の迅速かつ正確な確認
- 被害者への配慮措置と行為者への対応
- 再発防止策の実施
相談窓口は人事担当者1名だけに任せず、できれば男女それぞれの担当者や外部の相談窓口も併用する事業所があります。職員数が少ない小規模事業所では、法人本部や社会保険労務士など外部の専門家に窓口業務を委託する形も選択肢になります。
記録の取り方で対応の質が変わる
ハラスメントの相談を受けた際は、次のような項目を記録しておくことが後の対応を左右します。
- 発生日時・場所
- 当事者(行為者・被害者)の氏名と関係性
- 具体的な言動の内容(可能な限り発言をそのまま記録)
- 目撃者の有無と証言
- 相談者が希望する対応
記録が曖昧なまま時間が経過すると、行為者側が事実を否認した場合に事実認定が難しくなり、対応が長期化するケースがあります。相談を受けたその日のうちに、当事者の発言をメモに残しておくことが望ましいとされています。

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カスタマーハラスメントは「サービス業だから仕方ない」では済まない
利用者や家族からの暴言・暴力・セクシュアルハラスメントは、長らく「介護の仕事だから我慢するもの」という認識が根強くありました。しかし近年はこうした行為も事業所として組織的に対応すべき問題として位置づけられるようになっています。対応の基本は次の流れです。
- 初回訪問・契約時にハラスメント行為があった場合の対応方針を説明しておく
- 行為が発生したら職員単独で判断せず、必ず管理者に報告する
- 管理者はケアマネジャーや他事業所とも情報共有し、サービス提供の継続可否を検討する
- 悪質なケースでは契約解除や警察への相談も選択肢に入れる
訪問介護の現場では、利用者の自宅に一人で入るため緊急時の連絡手段(携帯電話のショートカット登録、合言葉による緊急連絡など)をあらかじめ決めておく事業所もあります。
よくある失敗パターン
ハラスメント対応で失敗しやすいのは、次のようなケースです。
- 「相性の問題」として個人任せにし、担当者を交代させるだけで終わらせてしまう
- 行為者が家族の場合、利用者本人へのサービス継続を優先して家族への注意を避け続け、職員の離職につながる
- 相談窓口を設置したものの周知が不十分で、誰にも相談されないまま退職に至る
特に3つ目は、せっかく制度を整えても機能していない典型例です。就業規則への明記だけでなく、朝礼や研修で繰り返し窓口の存在を伝える運用が欠かせません。
事業所規模別に見る対応の考え方
小規模な事業所では専任の人事担当者を置けないことが多く、管理者がハラスメント対応も兼務する状況が一般的です。この場合、外部の相談窓口(社会保険労務士事務所や都道府県の労働局)を併用し、内部だけで抱え込まない体制にすることが現実的な選択肢になります。中規模以上の法人では、複数事業所を横断する相談窓口を本部に設置し、事業所間で情報を共有できるようにしているケースもあります。
都道府県労働局の総合労働相談コーナーでは、職員間のハラスメントに関する相談を無料で受け付けており、事業所側からの相談にも対応しています。対応に迷う場合は、早い段階で外部の相談窓口や社会保険労務士に状況を伝え、助言を受けることをおすすめします。
相談体制を整える際の注意点
ハラスメント対策は一度マニュアルを作って終わりではなく、年に1回程度は研修や事例共有の機会を設け、職員の理解を更新していくことが重要です。研修内容や受講者の体調・ストレス状態には個人差があるため、画一的な進め方にこだわらず、職員の様子を見ながら柔軟に実施することも検討してください。制度の具体的な設計や行為者への懲戒処分の妥当性については、社会保険労務士や弁護士など専門家に相談しながら進めることを推奨します。
まとめ
介護事業のハラスメント対策は、職員間のハラスメントと利用者・家族からのハラスメントを分けて、それぞれに合った相談窓口・記録・対応フローを整えることが基本です。小規模事業所ほど外部の相談窓口を活用し、抱え込まない体制を作ることが現実的な一歩になります。
よくある質問
- Q. 介護事業所にハラスメント相談窓口の設置は義務ですか?
- A. 職員間のパワーハラスメントについては労働施策総合推進法により相談窓口の設置を含む雇用管理上の措置が事業主に義務付けられています。利用者や家族からの行為への対応は法令上の一律の義務ではありませんが、事業所独自のルール整備が望まれます。詳細は労働局や専門家にご確認ください。
- Q. 利用者からの暴言が続く場合、サービス提供を断れますか?
- A. 契約内容や状況によりますが、悪質な行為が繰り返される場合は契約解除も選択肢になり得ます。ケアマネジャーや他の関係機関と情報共有したうえで、法人として組織的に判断することが望ましいとされています。個別の判断は専門家に相談してください。
- Q. ハラスメントの証拠が少ない場合はどう対応すればよいですか?
- A. 発言内容や状況をできるだけ早いタイミングでメモに残し、目撃者がいれば証言も記録しておくことが重要です。証拠が少なくても、相談を受けた事実と対応経過自体を記録しておくことで、後の対応の根拠になります。
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